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「中国は違法行為」と非難したハーグの国際仲裁裁判所
こうした緊迫した状況の中で二〇一六年七月一二日、中国の南シナ海の島嶼の領有権主張に関する一つの国際社会の判断が下される。中国にスカボロー礁をまんまと実行支配されてしまったフィリピンが二〇一三年一月にオランダ・ハーグの国際仲裁裁判所に仲裁を申し入れた、その判決裁定が発表されたのだ。
判決では、中国が主張する九段線は歴史的根拠がないと完全否定された。中国がフィリピンと領有を争うスカボロー礁などに勝手に建造物を建て、軍事拠点化しようとしていることは、国際法に照らし合わせ完全な違法行為、ということになる。
ハーグ仲裁判決のおもな内容は以下のとおりである。
①中国が主張する九段線内の資源についての〝歴史的権利〞の主張は法的根拠がなく国連海洋法に違反している。
②中国側が礼楽灘(リード堆)で資源採集しているのはフィリピンに対する主権侵害であり、中国側は南沙諸島のサンゴ礁生態系に回復不可能なほどに損害を与えている。
③中国側漁民の南シナ海における大規模なウミガメ漁、サンゴ漁はサンゴ礁生態系を破壊しており、これを停止させないのは中国側の責任である。
④中国台湾当局が実効支配している太平島を含め、南沙諸島の島々は岩礁であり島ではない。したがって、EEZ(排他的経済水域)も派生しない。
⑤天然の美済(ミスチーフ)礁、仁愛(セカンド・トーマス、またはアユンギン)礁、渚碧(スビ)礁はすべて満潮時には水面下に隠れ領海も、EEZも、大陸棚も派生しない。
中国の人工島建設はすでにフィリピンの主権・権利を侵犯している。
※話題のベストセラー『赤い帝国・中国が滅びる日』本文一部抜粋。
著者略歴
福島香織(ふくしま・かおり)
1967年、奈良県生まれ。大阪大学文学部卒業後、産経新聞社大阪本社に入社。1998年上海・復旦大学に1年間語学留学。2001年に香港支局長、2002年春より2008年秋まで中国総局特派員として北京に駐在。2009年11月末に退社後、フリー記者として取材、執筆を開始する。テーマは「中国という国の内幕の解剖」。社会、文化、政治、経済など多角的な取材を通じて〝近くて遠い国の大国〟との付き合い方を考える。日経ビジネスオンラインで中国新聞趣聞~チャイナ・ゴシップス、月刊「Hanada」誌上で「現代中国残酷物語」を連載している。TBSラジオ「荒川強啓 デイ・キャッチ!」水曜ニュースクリップにレギュラー出演中。著書に『潜入ルポ!中国の女』、『中国「反日デモ」の深層』、『現代中国悪女列伝』、『本当は日本が大好きな中国人』、『権力闘争がわかれば中国がわかる』など。最新刊『赤い帝国・中国が滅びる日』(KKベストセラーズ)が発売即重版、好評発売中。Amazon売行きランキング1位[中国ジャンル。2016.11.11~11.25]。